ビジネスパーソンを対象にした調査データでは、「仕事上のゴールを明確に示して、適切な指示・指導が行えること」はリーダーにとって重要な資質であることがわかります。
ビジネスの現場では、
・明確なゴールと目的を持つ
・そのゴールと目的をわかりやすく示すことができる
この能力の高さが最も重要とされる。
曖昧な指示はリーダーとしての資質を疑われる要因になります。また「上司や先輩に感じるストレス」アンケート(@人事ONLINE調べ)によると、指示方法に問題がある(指示が曖昧)がもっとも多く、「リーダーからの指示」に不満を抱えているメンバーが少なくはないということが伺えます。
出典:@人事ONLINE
コロナ渦では、リモートワークの導入により以前より、ミスコミュニケーションが発生しやすい環境になっています。ベテラン世代が気を遣って放った一言が、若い世代の誤解を招くことも少なく有りません。曖昧な指示を防いでチームワークを良好にし、成果をあげていくポイントを本記事ではお伝えします。
目次
曖昧な指示とは?_曖昧さはトラブルにつながる
リーダーが(自分自身が)曖昧な指示をしている自覚がないというケースもあります。たとえば仕事を進める際に、リーダーであるあなたがこんな指示をします。
リーダー
一見何の問題もない指示のように聞こえますが、実はこれは典型的な曖昧な指示です。この指示を受けたメンバーが、実際に行動に移そうとした際に、以下のような懸念が浮かぶのではないでしょうか。
メンバー
メンバー
メンバー
メンバー
このように、曖昧な指示とは「人によって解釈が異なってしまう」状態を指します。これでは、指示をだした当人に何度も確認をするというといったことが起き無駄な作業が発生していまいます。指示を出した方は「自分でやった方がはやかった・・・」と感じ、指示を受けた方は「指示するならわかるように伝えて欲しい」と内心思っているかもしれません。
曖昧な指示は、無駄な作業が発生しやすい
曖昧な指示が、日常茶飯事になっているチームはトラブルも発生しやすい
曖昧なやりとりは、誤解を招く
かたやリーダー自身も、メンバーの曖昧な回答に困惑することもあるのではないでしょうか。
メンバー
メンバー
メンバー
このような曖昧な回答だと、助けてあげたくても
リーダー
曖昧な指示は、現場を混乱させる
さらに曖昧な指示が、常態化するとマネジメントは崩壊し現場は大混乱になります。曖昧な会話が日常化している組織では、以下のようなトラブルが頻発します。
・作業効率の低下
・タスクが納期通りに完了しない
・顧客取引先からクレームが発生する
曖昧な会話が当たり前の組織では、コミュニケーションコストが重なり(確認作業、認識のずれ、必要のない作業等が発生)作業効率も下がりがちです。
さらにこのような組織では、目標設定、目標に対しての進捗、査定評価といった経営に関わる事も数値化されていない傾向があります。
意思決定のプロセスがわかりにくくなるため、
・「頑張っているのに、評価されていない」
・「目標設定に納得がいかない」
などメンバーが不満をかかえやすい状態になる
この状態を放置すると、経営の方向性もブレやすく不満が蓄積しメンバーが離脱しやすい組織になっていきます。取引先、顧客からクレームが発生しやすい状態になり、現場には大きな負担がのしかかります。「テキトーにやっておいて!」「いい感じでお願い!」上司やリーダーがこのような会話をしていたら要注意。メンバーを信頼して任せることと、メンバーを放任して丸投げすることは全く異なります。
・無駄、ムラ、無理が発生する
・クレームが頻発する
・現場に負担がかかる
・目標も経営の方向もブレる
・評価査定も曖昧
・不満を感じる優秀なメンバーが離脱する
脱!曖昧な指示。今すぐできる対策
「単なる伝え方だけの話でしょ?」とたかをくくらず、最悪の事態になる前に、対策を進めていくことをおすすめします。まずは、今すぐできる実践的なスキルを身につけていきましょう。
すぐできる!実践スキル_具体的な数字をいれて、曖昧さをなくす
冒頭で登場した「曖昧な指示」ですが、以下のようだったらいかがでしょうか。
リーダー
いかがでしょうか。これなら迷わず仕事に着手できそうですよね。会話に具体的な数字が追加されたことで、指示された側は、いつまでに何をどれくらいやればいいのかが一気に明確になったのではないでしょうか。
すぐできる!実践スキル_報告・連絡・相談でも数字を入れる
また、報告や相談も数字をいれた定量的なものであれば、曖昧さを回避できます。さらに、数字がはいることでより具体的な対策やアイディアを引き出すことも可能になります。
例:最近、業務量が多くて・・・ちょっとキツイです!
↓
メンバー
例:この案件、難しくてうまくいくか微妙ですね。
↓
メンバー
例:そのタスクは、今急ぎめで進めているので、なるべく早く終わらせます!
↓
メンバー
いかがでしょうか。曖昧な言葉(きつい、微妙、難しい、急ぎめ)を数値化することで、一気に会話がわかりやすくなったのではないでしょうか。これなら、報告を受けた方も、効果的な対策を伝えることができるはずです。
すぐできる!実践スキル_曖昧指示を改善
曖昧指示が多発する組織では、 日常的にコミュニケーションのずれが発生しやすく非効率的な状態に陥りがちです。 経験則、感覚だけで判断が下される組織は非常に危険です。 以下の手順で「曖昧な指示」を改善していくとスムーズです。
コミュニケーションから「曖昧さ」をなくす
まずは、メンバーとコミュニケーションをとる際には曖昧さを回避するため 以下の3点をおさえておきましょう。
形容詞は、人によって定義が曖昧です。具体的に伝えないと認識がずれてしまいます。
形容詞:
すごく、たくさん、とても、かなり、極めて、大変、はるかに、すぐに、ときどき、たまに、しばらく、そこそこ、つまらない、危ない、大きい、小さい、高い、安い、低い、長い、短い、遅い、広い、狭い
このまま(形容詞)では、人によって解釈が異なります。数字をいれてしっかり伝えましょう。
指示後:
こう、そう、どう 、この、その、あの、どの、こっち、そっち、こちら、そちら、あちら、ここ、そこ、どこ
5W1Hを入れる
察することはお互いに不可能だと認識し、5W1Hを忘れずに。
Who(だれが)When(いつ)、Where(どこで)、What(なにを)、Why(なぜ)、How(どのように) をいくら同じチームメイトだとしてもすべてを察することは不可能です。社外でも社内でも面倒臭がらずに数値化していきましょう。
曖昧さを無くすと、成果があがる?!
先ほどの例のように、数字をいれると組織内のコミュニケーションが円滑になります。実は、「数字をいれて、正確に把握する力」は経営においても非常に重要になります。この力があれば、理想を現実にできる実行力のあるチームができあがるといっても過言ではありません。
応用スキル_脱!曖昧で成果につなげる
「数字をいれる」 ことで曖昧さが回避することが可能になります。さらに、数字で把握する力を伸ばすことができると、チームの力がぐっと底上げされます。
わざわざ数値に置き換えしなくても問題ないんじゃない?そんな風に感じる方もいるかもしれません。そこで、数字に置き換えると何がいいのかビダイエットを例に「経験則や感覚値で、曖昧に取り組むAさん」と「物事を数値化し取り組むBさん」を比較してみましょう。
経験則や感覚値でダイエットに取り組むAさん
物事を数値化しダイエットに取り組むBさん
さて、AさんとBさんどちらがダイエットを確実に成功できるでしょうか。 おそらくAさんは一時的に体重は落ちるかもしれません。 しかし豆腐だけの食生活は精神的につらいでしょうし、体に支障がでてくるかもしれません。 ジョギングも3日間くらいはテンション高く続くかもしれませんが、1週間もすると忙しさを理由に走らなくなっているでしょう。 そして3ヶ月後くらいには挫折をしリバウントしている可能性があります。
かたやBさんは 適正な目標設定を行い(半年で3キロ)、現状を把握した上で(現在の消費摂取量) 継続可能な対策(生活の範囲内でとりくめる食生活、運動習慣の改善)を実行します。 1週間ごとに経過を観察し専門家にもアドバイスを求める姿勢でいます。 これなら、高い確率で「半年で3キロ」の減量が達成しそうですよね。
曖昧をなくして数値化できるチームとできないチーム
続いてビジネスシーンに置き換えて、「経験則と感覚値チーム」と「数値化できるチーム」の違いを比べてみましょう。
数値化できないチーム
数値化できるチーム
いかがでしょうか。新人営業育成に悩む両チームですが、どちらのチームが新規受注を達成できそうでしょうか。
・現状を正確に把握しないまま、経験則のアドバイスを即実行するチーム。
・現状を定量的に把握し、各プロセスを分析し第3者の視点を取り入れ、課題特定したのち施策を実行するチーム。
前者のチームは気合いと根性でのりきり、偶発的に成果が出せるかもしれません。しかし成果を出し続ける可能性はかなり低いと言えます。 後者のチームは各プロセスの改善をかさねることで、早々に成果を出す可能性が高いと言えます。 このように、経験則や個人の感覚に頼る組織は、偶発的で再現不可能な方法に頼ることになり成果が安定しません。
応用編!「曖昧さ」をなくして課題解決する3STEP
曖昧さを回避したコミュニケーションができると、より難易度の高い問題も解決することができるようになります。
STEP1_曖昧さをなくして、現状を把握する
自分の抱える業務課題も、曖昧さをなくすことで解決の糸口がつかめます。
例:課題が曖昧なままだと・・
自分
例:曖昧さをなくして自身の抱える課題を把握する
自分
問題を抱えた時は,感覚値で判断せず、「何が・どれくらい・どうなっているのか」を把握しましょう。自身の置かれた状況を冷静に確認することが重要です。
STEP2_曖昧さをなくして、理想の状態を明確に
次に、解決に向けて理想の状態を把握します。具体的にどのような状態になれば、課題が解決できたのか。理想の状態(目標)を把握します。
例:曖昧なまま、理想を語る
自分
これでは、解決という白馬の王子様を夢見て一生待ちぼうけしてしまいます。
例:曖昧さをなくす
自分
理想の状態はどうあるべきなのかを考えることで、対策を打つことができます。
STEP3_現状と理想のGAPを把握
現状と理想が明確になったら、GAP(現状と理想の差分)を数値化していきます。
例:GAPを数値化できず曖昧な場合
自分
これでは、忙しい現実はいつまでたっても変わりません。
例:GAPを数値化できている場合
自分
いかかでしょうか。曖昧さをなくしたことで、「問い合わせ業務を2.5時間減らすための対策」を考えればいいことが明確になりました。 さらに他のメンバーまたは外注化することで、自分以外でも対応できる体制をつくれるのではという仮説もたてることができます。 このように自身がやるべきことが明確になっていきます。( ※実際には、ここからさらに対策の検討〜実行〜改善と進んでいきます。 PDCAサイクルをまわすことで「理想の状態」に近づけていきます。)
曖昧さをなくして、チームの力を最大化しよう
チーム内で発生する曖昧なやりとりを放置しておくと、業務が非効率になるだけでなく、チームの雰囲気も停滞します。数字を入れることで、「曖昧な指示・曖昧な回答」は回避することができます。さらに物事を数値に置き換えて定量的に判断することができるようになると、課題解決する力を伸ばすことができます。 チームは、価値観や経験が異なる人間が集まっています。あなたの考えていること、感じていることがテレパシーのようにチーム全員に伝わるということはありえません。 曖昧さを放置せず、ぜひ明日から実践してみてください。