一人ではできないことを人を巻き込み(他人の時間を使わせてもらって)事業を推進しているのが経営者という人間です。一緒に船に乗ってくれているメンバーとどのようなコミュニケーションをとるかによって、チームメンバーの成長を大きく左右します。しかし現実には、コミュニケーションに違和感をかかえるリーダーは少なくありません。チームメンバーと友達のように仲良くなる必要はありませんし、コミュニケーションのプロにならなくても問題はありません。育成に必要なコミュニケーションスキルについて解説します。
経営者が身につけたいコミュニケーションスキル
経営者が身につけておきたい人材育成におけるコミュニケーションスキルは、大きく3つあります。
相手に教える:ティーチング
ひとつめは、ティーチング(相手に何かを教える時のコミュニケーション)。相手が知らない、経験していないことを伝える時に使用します。例えば以下のようなケースがあります。
- 初めての営業の前に、リーダーが実際にやってみせる。
- 悩みに対して、過去の事例やたとえ話で経験則をつたえる。
- 社内のナレッジとして対策方法を展開する。
- 外部の専門家や教材で学習してもらう。
伝えた相手が自分で実践できるようになることが重要です。相手が自分の頭で咀嚼できるように伝えることがポイントです。教えても相手が実際にできるようになっていなければ、ティーチングできたとは言えません。
相手を導く:コーチング
コーチングという単語を耳にしたことがある方はいるかもしれません。ティーチングとの大きな違いは、相手に答えがあるかどうかという点です。経験がない・知識がないときにはティーチング、相手に答えがある(答えを出すことができる)ときはコーチングとなります。また、コーチングは自分の答えを相手に押し付けるのではなく、相手を信じ相手を導くことがポイントになります。使用シーンのイメージは以下のようになります。
- 自分が任された目標をどう達成するのか考える。
- トラブルが起きた時に、要因を分析させる。
- 今回の経験で学んだことを整理させる。
- どんなキャリアをつくっていくのか整理するとき。
コーチングは一般的に知られるようになり、資格保有者も増えています。ですが、経営者がコーチングの専門家になる必要はありません。経営者は経営者のプロになるのが仕事です。(相手に答えを伝えるだけではなく)相手が自分で答えを出せるように
導くというスタンスを持っておくことは大事です。
相手の行動を変化させる:フィードバック
育成においては「答えを教える・答えを導く・相手の行動を変化させる」この3つが重要です。行動を変化させるコミュニケーションとしてフィードバックがあります。使用シーンとしては以下があります。
- 独りよがりになっているメンバーに釘をさす
- メンバーに視野の狭さを指摘する
- 顧客やチーム内での態度について指摘する
フィードバックが3つのスキルの中でも、最もデリケートなコミュニケーションと言えます。相手の良い点をフィードバックする際は問題ありませんが、相手にとって耳の痛い話を伝える際は注意が必要です。相手が受け止めることができているかを見守り、最終的に行動を変化させる必要があります。耳の痛いフィードバックは、(自分の常識を否定されるため)相手は混乱します。その後、時間かけて気持ちを立て直していき、行動が変化しているのか観察する必要があります。
3つのスキルの使い分けポイント
経営者は、ご紹介した3つのコミュニケーションスキルを使い分けメンバーを育成していきます。コミュニケーションスキルの使い分けは以下のようになります。
- 経験がない、知識がないために自分で答えを出せない場合▶︎ティーチング
- 答えがあるが、自分で解を導き出せない場合▶︎コーチング
- 気づいていない事実を伝えるとき▶︎フィードバック
スキルは確かに大事ですが、土台は相手との信頼関係です。伝える本人が誠実であれば、多少不器用でも伝わり相手を変化させることができます。メンバーとのコミュニケーションがすれちがっていたら土台の信頼関係や、自分自身の振る舞いも含めて見直してみるといいのかもしれません。今回ご紹介した3つのコミュニケーション方法は、仕事をしていると、自然に身についていくこともあります。カタカナだと難しく感じますが、要は「教える・(信じて)待つ・(建設的な)お説教」の3つです。子供時代に、あの大人素敵だったなーと思い出す人はこの3つを使い分けて対応してくれていたのかもしれないな個人的には思っています。